【福岡県大野城市のアパートに内縁関係の女性の遺体を放置し、死体遺棄罪に問われた被告の男性(74歳)に対し、福岡地裁は26日、懲役1年執行猶予3年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。】
男と女の三十年はなんだったのか。
相手の身元も分からないまま暮らしはじめた二人。
気がつけば三十有余年の歳月が流れ内縁関係の妻は病気で寝たきり状態になっていた。
男性の申し立てによると相手女性は少なくとも五十歳代であった可能性が高いという。約二十年ほどの年齢差があったことになる。
何らかの事情で妻には戸籍がなかったか、あるいは内縁関係の夫にも知られたくない理由があったのか。
いまとなれば女性の身元を探る手掛かりは、もしかすると遺体発見当時の管轄署には存在するのかもしれないが、重大な犯罪にでも関わっていないかぎり身元を解明するためだけの再捜索は困難であろう。
戸籍がない、あるいは提示できない理由があって、マイナンバーもなくパートタイムも辞めざるを得なかった。そのような状況だから当然のこととして婚姻届けも出せなかった。
女性は病院へ行くことも拒否し最後には死に至ってしまったが、役所への死亡届もされぬまま遺体を住居アパートに残した。その後建物の取り壊しなどにより発覚をおそれた男性が逃亡する結果を招き、それが死体遺棄罪に問われた。
被告男性が語っているように、なにか身元を詮索してはいけないと思わせるつよい意思が女性にはあったのかもしれない。
それでも男性は彼女を愛し、ともに暮らしてきた。
二人の間には男と女、夫と妻、そして家族としての絆はあったのだろう。
二人がともに暮らした事実を証明するものは公的書類としてはない。あるのはただ男の脳裏に残る長い年月の記憶だけかもしれない。
特殊な事情があった男女。
女性が身元を明かせなかった理由は様々に考えられる。
①実際あった事件だが、そもそも出生届がなされていなく戸籍そのものがない。
②人的あるいは金銭がからむ重大事件に関係し逃亡中であった。現在地を知られることにより想定される様々な危難。
③隠したい結婚の過去や、まつわるトラブルがあり、戸籍を取り寄せることで前夫にも露見することを恐れた。
④アジア人の不法滞在者、もしくは日本で出生したが①と同じ結果となっている。
しかしふと思った。
男女間にまつわる話で下世話によく使われる、籍を入れた入れないの言葉。これにより法的に関係が確立し妻の権利も保証される。
ただし、それが男と女の究極のかたちで理想かといえるのかどうか。それは疑問だ。
愛だけで生きてはゆけない、しかし愛のない男と女の関係は寂しい。
戸籍で法的証明は成立するけれどもそれが男と女の愛情の説明にはけっしてならない。
愛のかたちにはいろいろある。またそれでよいのではないか。
ふと外を見る。
薄曇りの空、どこからともない太陽が野原に降り注いでいる。草を焼き尽くす勢いはこの時期の太陽にはない。
気温は30℃ちかいが湿度は45%。
あわただしくはないタイの年末、けだるい午後である。
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