妻が住んでいるアユタヤのレジデンス。
隣近所には魔女を守るように友人が住んでいる。
うちはいちばん奥の端っこの部屋。
通路を挟んだ向かいがいつも登場するアム。
そしてうちの隣りがヌゥというこれも友達が住んでいる。彼女は魔女よりも年上で元教師という変わり種で今の勤務はトランスポートセクション(輸送部門)。まだ独身で週末には母親が住むバンコク郊外まで帰っている。
けっしてヤングガールではないがマザコンで母親の料理がなければ1週間は我慢できないという。
平日の朝夕はヌゥが運転する車で会社を往復している。
彼女たちはマーケットでもいつも一緒なので有名らしい。とにかくどこでも大騒ぎする。いつも陽気で明るいのだ。そして時には、同じものがこことあそこでは値段が違うなどと大声で話しあうので言われた店は大変だ。彼女たちの会社はちょっとした企業なのでバックには千人を超えるワーカーやエンプロイーがついているので売る側も気を遣うらしい。店の悪い噂はすぐ拡散する。
そんなある日、みんながワイワイ言いながら帰ってきた。
あたしがアユタヤのレジデンスに滞在しているときの記憶をたどっても、彼女たちが戻ってきたときはすぐわかる。エレベーターホールからは何十メートルも離れているのだが笑い声が響いてくる。
そうそう今回のお話。
彼女たちはそれぞれ自分たちの部屋のドアを開けながらまだ喋りつづけていた。
そのときだった、素っ頓狂な声を上げたのは魔女姐さん。
「わああタイヘン、テラスの洗濯物がない」
昨日の夕方、一枚だけ手洗いで干しておいた洋服がないという。
「すぐに下へ行ってみないと、誰かが拾ったかも」
アムが大声を出す。
そして隣のヌゥが、
「うちのテラスからも見てみるからね。風はいつもそちらから吹いてくるから」
「お姉さん、早く行きなよ」
アムも他人ごとではない。
彼女たちにとって衣類はとても大切なもの。
魔女姐さん、テラスからしばらく下を眺めていたが、ふと思い出すことがあった。
クローゼットを開けてみた。
「アハハ アハハ」
ひとり大声で笑いはじめた。
それを聞いてみんなが集まってくる。
「ゴメンみんな」
「なによ。どうしたの」
「ごめん、ほんとにゴメン。今日雨が降ったらタイヘンと思って今朝取り込んでいたわ」

とたんにみんながぶぅぶぅ言い始めた。
「これだからお姉さんは」
と、アム、そしてヌゥは、
「もう次からは信じない」
魔女姐さんはおかしくていつまでも笑っていたという。
暑いある日のこんなお話。
暑いからしかたないニャン

Photo from กลุ่มรักหมาจัง ในประเทศไทย
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