タイになれて当たり前になっている日常のマナーなどについて、むかしのことをふと思い出してしまった。
1900年代も終わりの頃、タイにそれほど詳しくなかった、最初に覚えようとしたのは食事の仕方だったかもしれないなとなつかしくなった。
食事ならナイフとフォークだろうと思われるかもしれない。
すでにご存じの旅通の方もいらっしゃるだろう、タイではナイフの代わりに右手にスプーン左手にフォークというスタイルが基本。もちろん現代はレストランなどでは必要なら当然ナイフも出てくるのでふだんの食事での話です。
あたしがタイの田舎をうろついていたころ、ふつうの家庭の食事ではタイの作法通りにスプーンとフォークという使い方はあまりなくどちらか一つを使ったり、時には右手指で器用にカウニヨ(もち米をふかしたもの)とおかずなどをつまんでいた。カウニヨは指を使うほうが食べやすいことはもちろんのことです。

もう20年以上も前の話。
田舎の町でケンタッキーに入った。
若い女性がフライドチキンを食べていた。
スプーンとフォークを器用に使っているのだが、あたしの目にはなぜか無理をしているように映った。もちろん彼女は当然のマナーとしてそうしているのだが、フライドチキンなどは手でつかんでむしゃむしゃ食うものだと思っていた自分には不思議ともいえる光景だった。なので今でも記憶に残っているのだ。家庭ではともかく公の場所で手づかみはマナー違反ということだった。
KFCは今はちゃんとナイフもプラスチックだが用意されている。
しかしタイ人はスプーンとフォークを実に器用に使う。見ているとそれはときに優雅であり流れる音楽のようにも思える。それはまるで長い指をつかいしなやかに踊るタイ舞踊のようでもある。
あたしも時々真似をしてみようとするが魚などはやはり箸のようが食べやすい。スプーンとフォークという組み合わせがどうもうまくゆかない。
それが文化というものだ、そう自分に言い聞かせている。
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