アジアの風をいっぱいに受け 雲のように日々を・・・・
それじゃゆくぜと背を向けて~~ 北島三郎さんの博多の女。
旅立ちのときになんども使ってきた、ただしこのパートだけ。
しかし今回は、あんたいってらっしゃいと見送る女もいなくこの歌は合わない。
早朝の旅立ち。
空港特急の一番電車。
夏なので外はすでに明るい。
これが冬場だとまだ暗く、がらがらとカバンを引きながらいつも夜逃げをイメージしてしまう。
おかしなもので夜が明けないと、さあ行くぜという気分にもなれないのだ。
今回は荷造りに手間取った。予定したものが全部おさまったのは深夜だった。
冷凍食品などもあるので可能なかぎりパッケージングを遅らせたこともある。カバンに詰めながら、まるで買い出しだなと思わず笑った。
さてマジ出かけよう。
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入院して戻ってきてから静かになった隣のおじさん。
よく咳をしていたがそれもなくなった。
タバコもやめたようで少しは入院の効果があったようだ。
またいちど鍋でもしようかと話していたがあっという間に暑くなってしまった。
私などは食べることは日々の生活の上でとても重要なことだと考えているのだが、世の中には食にそれほど欲もこだわりもない人がいるものだ。
隣人はまさしくそれだ。
引っ越してきてからまだいちどもキッチンのIHコンロなど使ったことがないという。
飲み物から食事まですべて買ってきたものだ。
だからといって自身の健康に感心がないわけでもないのだろうが、毎日の食事を弁当で済ますというのは私にはとてもできない。
ある午後、ぷらぷら歩いていると向こうから自転車に乗ったおじさんがやってきた。すぐ私だとわかったらしく停まった。
一時のことを思えば血色もよくなり、顔に生気が戻っている。ひと目で元気になってきたなと理解できた。
「元気そうだね、よかった」
「うん」
悪気はないのだが酒がないと口数は少ない。
「あ、そうだ。またタイへ帰ってくるから頼みます。なんかあったら電話鳴らして下さい、折り返しコールしますから」
「おお、また行くの。わかった」
よいところで会った。
元気そうな顔も見れたし、不在中のこともお願いできた。
なんだかうれしくなった。
日々の生活音でおおよその状態は判断できるのだが、元気そうな顔をみることができてよかった。
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健康で医者などに用はない日々を過ごしてきたがある時期から通うようになった。
友人のバーバー・タカくんの店でしゃべっていたとき、血圧の話になり、年下の彼がすでに医者にかかっていることを知った。
‘簡単な血圧計がありますから計ってみますか’
それまで病院へ見舞いにゆくことはあっても自分で血圧など計ってみようとも思わなかった。そもそも血圧に問題があるというような自覚がなかった。
タカくんが出してきた血圧計はみるからに簡単そうなもので、大丈夫かなと思うような代物だったがいわれるまま腕を出した。
結果はビックリするほどの高い数値だった。
‘これはヤバいかもしれませんよ’
この器械の信ぴょう性を差し引いても高いだろうと彼はいった。
脅された結果、教えてもらったクリニックへゆくことになった。
あれからもう何年になるだろう。
コロナ前だったから4,5年は経っているか。
クリニックといっても診察予約が要るわけでもない。狭い待合で待つのだが、ほとんど患者の姿がない。もちろん日によってはびっしり詰まっているときもあるにある。
そんなわけで私も薬をもらうために1か月あるいは2カ月にいちどの間隔で通っている。
これでも患者なので面談し血圧だけ計ってもらう。それくらいなら自分でできるが、いちおうかかりつけ医にしておくと大きな病気になったときに紹介状がもらいやすい。
「またしばらくタイへ帰りますから薬3か月分頼みますね、あ、それはそうと」
待合室でみた診察時間の表示が気になっていた。
「どうしてドクターのところは火曜日の午後休みにしたの?」
以前はなかった休みだ。町医者の休みは木曜日と決まっている。
するとドクター、
「ああ、もうヤル気がないんですよ」
「はぁ。なにいってるの」
問い詰められて逃げ場をなくした若い子がいうセリフだった。
「そんなこといわないで、ここで赤ひげと呼ばれるまでがんばってよ」
私は驚きながらそういったが、
「いや、もうヤル気がなくなったんですよ」
おいおいマジな声だ。
私はいそいで話を変えた。
なにがあったのだ。
齢たかだか60歳を超えたばかりで、やる気がないとは。
浮気がばれて嫁さんに逃げられたか、ゴルフの負けが大きくなってきたのか、なにがあったのだヘイ、ドクター。
歩きながら思った。
これはもしかしたらほんとうに閉めるかもしれないな。
そもそも数か月分の薬が在庫切れとかで処方箋をくれた。こんなことは今まで一度もなかった。
しかし、そうなったらマジで面倒だな、またいちから病院探しか。
まあ秋に日本へ戻ってきたらすべて判明するだろう。
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おなじみ今や大阪の銘菓となった、チーズケーキのりくろーおじさんの店。
日々の妻との通信では出来るだけその話題にはふれないでおこうと沈黙していたが、妹ポムが妻に、
「ちいさん戻るのならりくろーケーキお願いして。夢に見るほど食べたいのよ」
バンコクにもコピー商品の店がある。けれど味はやはりちがうという。
そんなことでまた手提げ荷物が増えることになった。
あれだけは機内持ち込みにしないとどうにもならない。
ええい、ついでだ、他の親しい友人にも買ってゆこう。
調べてみて驚いた。
卵などの高騰や円安によるチーズなど輸入品が値上がりしたのだろう、かつては安くて美味しいイメージだったりくろーおじさんのチーズケーキが一個965円に。
私にはまだ600~700円時代の記憶がこびりついていたのでほんとに驚いた。
そしてもうひとつあらためてビックリしたのがこのチーズケーキ、大阪でしか買えないとばかり思っていたが、この時代、ネット注文、宅配が全国に広がっていた。日本国内ならどこにいたって食べることができる。
大阪の片隅で産声を上げたケーキ屋さん。
大阪ミナミ難波に店が出てから私は知った。もう行列がはじまっていた。何十年前になるか。今も店舗はおそらく大阪だけだろうが、焼きたてが買えるというコンセプトそしてその甘すぎないまろやかな美味しさは全国ブランドになって当然だと思う。
材料不足などにより各店舗では客一人あたりの販売個数を制限しており二個までだという。便利な店舗では来客が多く予約もできないようだ。
行列に並んで二個買って、また行列に並べばもっと買うことは可能だという。
通販では数日前の製造商品になりタイへ持ってゆくには心配だ。
方法は省略して、ともあれ私は出発前日、店舗引き取りで四個の焼きたてチーズケーキを確保した。
やれやれノルマのひとつはなんとかクリヤーできそうだ。

りくろーおじさんの店、より拝借
あ、そうだ、りくろーおじさんのプロモーションを書くつもりではなかった。
いずれの業界でもそうだが、自分の前に続く道をただ一筋に歩くことの大切さ、このケーキ屋さんをみてあらためてそんなことを思った。前にある道を信じて懸命に歩いてきた結果が今日の隆盛をもたらした。
私が学生時代にアルバイトでお世話になった建築材料屋さんがある。
もともとは同業種の別の会社で番頭だったオーナー、そのとき私もその会社にバイトで入っていたが、しばらくゆかないうちに会社は倒産し、番頭だったその方は、「ほかにはなんにもできないから」そういって自分でおなじ商売を始めた。
当時はまだ小さな商店だった。
私も夏の長期休みにはバイトで配達トラックに乗った。
そして年月が過ぎ、何十年ぶりかで創業時の商店があった付近を歩いた。
そして目を疑った。
かつて小さな倉庫に入りきらない材料などが野積みされていた場所には立派なビルが建ち、プレートには記憶にある名前が刻まれていた。
目の前にある道をただ真っすぐ歩いた。
学歴など関係なく、二代目でもなんでもない、愚直にも見える生き方を貫いたオーナーだった。
広い応接室で、
「なんにも立派なことはやってないよ。これしかできかなった、それだけよ。お客さんとわしについてきてくれた従業員たちのおかげだよ」
午後の明るい日差しが部屋いっぱいに広がっていた。
あれからまた年月が過ぎた。
社長が引退し、部下だった一人が代表になったと風の便りがあった。
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