ちっちゃい扇風機だよ

夕方5時、
「タダイマぁ~」
にぎやかに魔女さんが帰ってくる。朝は早いが帰宅も早い
「今日はネ」
大きな手提げをゴソゴソ。
「今日はネ、ランチタイムにシリキットセンターに行ってきたの。ITフェアをやってるのよ」
箱を取り出した。
「はい、あなたにオミミゲ」
「ミミゲ?」
「忘れたニホンゴ、Souvenirよ」
「おみやげか」
「そうそう、それ」
小さなファンだった。
「USBで使えるから便利でしょ」
あたしは日中にエアコンを使わない。それほど室内の気温が上がらないし体調も考えてのことだ。30℃程度の気温では暑さを感じなくなったのかもしれない。
おもちゃのような扇風機だが、コントロールつまみもあってなかなか優れものにみえる。
・・・ま、こわれるまでは使えるだろう。
「ありがとう、うれしいなあ」
言っておくが、このひと言が大切なのだ。これが愛情に対する思いやりのお返しというもの。男たるものこれを忘れてはならない。
男性とりわけ日本人は、夫婦なんだからいちいち言わなくてもわかるだろうなどとよく言うが、言葉にするとしないでは大きな違いがあるのだ。
それからしばらく毎日小さな扇風機を顔に当てたり、PCが熱いようならそちらに向けたりして重宝してきた。
しかし世の中それほど良いことばかりが続くわけもない。
日本の春先のように鼻がムズムズし鼻水が出始めた。
毎日まいにち顔に風を当てていて鼻かぜをひいてしまったようだ。
久しぶりに思い出した言葉、
過ぎたるは猶及ばざるが如し、これやいかに。