チャオプラヤー川でタイムスリップ

チャオプラヤー川はバンコクの西部を流れている。
西部と書いたがバンコクの中心を流れるという記述も多い。川を渡った西側にもバンコク街区が広がっていることから中心と言ってもよいのだがあたしのイメージからするとバンコク市内中心部よりもかなり西に位置している。
この川が好きで折にふれ訪れては何かを書いている。
大きな橋の上から川を見下ろす。
上流に向かって左手に有名なワット・アルン。アルンは暁の意味で、三島由紀夫の小説『暁の寺』であまりにも有名。
はるか彼方を眺めれば行き交う船のエンジン音や汽笛がしばし夢の世界へと誘う。
この時間が好きだ。
およそ600年ほど前、チャオプラヤー川の上流に花開いた王朝アユタヤ。
様々な国から陶磁器や織物を満載した交易船が王都目指して上っていった。
アユタヤには日本人町も形成され山田長政が王国軍の侍大将として仕えたこともよく知られた史実。
時には自然の猛威の前に力尽きあと少しのところで水中に没してしまった船も多い。
チャオプラヤー川で沈船の遺物を探す仕事が生業として成立していることからも、その時代、船旅がけっして安全、容易でなかったことがわかる。
できるならば日がな一日この川を眺めていたい。
しかし暑い。
南国の太陽で皿が焼けそうになった。気のせいかめまいもする。
ぬかみそにちかいとはいえ脳みそは守らねばならない。
あたしは階段をトントンと二つずつ飛び降りた。
