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    ああ夏休み 高校生編① 慟哭

    日々のドキュメント 旅  アジア 
    08 /04 2018

     
     ちい公坊ちゃまは県立高校の一年生になっていた。
     かつての神童坊やは都会の渦の中でもがきながら少しずつ成長はしていたが、多感な青春の入り口で学業にいそしむ時間は確実に少なくなりつつあった。

     周りの仲間たちと過ごすことが多くなった。
     異なる中学からやってきた同級生と知り合うことはあらたな世界への旅立ちでもあった。

     友達ができた。
     彼はお寺の息子だった。妙に気が合った。
     互いの家は遠かったが自転車で行き来した。

     県庁所在都市でありちいさな町ではないが自転車だと距離を感じなかった。あれが若さというものだろうか。
     
     お寺の息子だというわけでもないだろうが彼は下駄をはき自転車で海辺の我が家にもやってきた。
     友人たちと堤防の上をカラコロと歩き、なにか冗談を言っては大きな声で笑った。

     夏になるころ彼は医科大病院に入院した。突然のことだった。
     歯茎に腫瘍ができたということで何度かの見舞いのときも元気な笑顔をみせていた。
    「手術が決まったから、それがすめばすぐ退院だよ」

     あの日が彼を見た最後だった。夏物の薄水色の半袖パジャマ。腕がやけに白かった。
     腫瘍は悪性だったという。
     そばについていたわけではないから訃報を聞いたときは冗談だと思った。
     あまりにもあっけなかった。

     まさかあの彼が逝ってしまうとは、ただ驚き、葬儀でも涙は出なかった。

     数日後、仲間が我が家にやってきた。みんなで彼と行った海辺を歩いた。
    「あいつちょっと前にここへ来たのにな」
    「元気だったな」
     みんな思いは同じだったのだ。彼らのなかには中学時代からの仲間もいた。


    shining sea


     言葉が出なかった。
     自分とはみじかいつきあいだった。
     そう思うがこらえきれずに涙が出た。
     泣きながら堤防を下りた。
     誰も何も言わなかった。

     午後の陽射しが水面に反射してキラキラ輝いていた。

     


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    ちい公

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    空ゆく雲のようにいつも自由でありたい。もとノラのちい公がお届けするごく私的な日常と愛する国そして人々への思い