
部屋は概ね片付いた。
あたしの仕事場も居間の片隅にちょこっとできた。
小さなキッチンも奥ちゃまが頑張ってなんとか収納できたようだ。非常時のような買いだめ商品の数々は再びどこかでしばしの眠りについたとみえる。

しかし、どうも困った。
新しい住まいになかなか馴染めない。
どういうことなのだろうと分析してみた。
この感覚。
朝から落ち着かずふわふわした気分。
そうだ、これはどこかリゾートで宿泊した朝と同じだ。たしかホアヒンビーチの朝もこんなだった。
おまけにこの部屋のフロアが木目調で、これはどこかで見たと思えばホアヒンリゾートのホテルの床と同じだ。

そもそも、目覚めてすぐ目に入る、窓外に無駄に広がる草っぱら。
ちい公のどこかでながく眠っていた野生の本能がなにかを感じ、こんなところにじっと座っている場合ではないぞとけしかけてくる。それが落ち着かない原因の一つだろう。
当たり前だが太陽が東から昇る。
目の前の電線にスズメや少し大きめの名も知らぬ鳥たちが点呼のように整列する。
「おーい、なにやってんだよ。出ておいでよ、クック、ケッケ、チュンチュン」


午前9時半、室内気温30度、湿度60パーセント。
暑さは感じない。
なんとか気分を変えねば。
リゾートに来ていると言い聞かせ思いっきり気分転換することもできない悲しい性分。
ここはどこ?
あたしはだあれ?
こんなことを言いながら人生の貴重な時間がすぎてゆく。