二日目は淡路島へ。今夜はこの島で一泊。
高速バスは朝の7時50分。
駅前広場で妹たちがホテルからやってくるのを待つ、午前6時。
半袖ではすこし涼しく上着をはおれば歩いたときにすぐ汗ばむ。微妙な季節。
隣で座っていた妻がとつぜんクスクス笑いだした。体を震わせている。
「どうした?」
問いかけに妻は笑いをこらえながら数メートル先を指さした。
原因はすぐわかった。
ダークスーツのサラリーマン風の男性が電話でしゃべっていた。
「はいそうです、いえ、それはえーと、あのうですね午前中にですね」
なにか約束の時間を話しているようだ。
「あのう、それはですね、先日お話してると思うんですが。えーと、なんでしたら私のほうでもう一度確認しまして、あのう、詳しいことは再度ご連絡しますので、あのう、そのままでお待ちいただけますでしょうか。えーと、そうですね、はいはい、よろしくお願いいたします」
妻の笑いはしばらく止まらなかった。
つい先日アユタヤで車を運転してくれた友人の夫トーちゃんの日本人物まねそのままだったのだ。
「あのう」と「え~と」そして「ハイハイ」
どうしてこんなにウケるのかよくわからないが、あれからふたたび「あのう」と「え~と」は我らの流行り言葉になってしまった。
なにか返事に困ったときに使う。
これだけでウケるのだから旅芸人としては楽なものだ。


やがてやってきたミルキーたちと合流し高速バス乗り場まで電車移動。
それから定時出発の高速バス、穏やかな秋晴れのなか淡路島に無事到着。



まず寄ったのは国生みの伝説淡路島ならではのお宅、神々の子孫の家。
おだやかであたたかいまるで今日の日のようなご夫妻が多くの猫と暮らしている。
ミルキーが楽しみにしていたおうち。
妻にとっては一年にいちど帰ってくる実家のようになってしまった。魔女に目をつけられたお宅には迷惑かもしれないがあきらめてもらうしかない。
奥様が出迎えてくれた。
ご主人は日曜だが最近あちこちに出没して農作物に被害を与えるイノシシの対策会議でお留守だった。
「お昼までには戻ると思うけど、さきにこれよかったらどうぞ」
大勢で押しかけたあたしたちに奥様が用意してくれていたおにぎりなどがテーブルに並ぶ。
美味しかった。
久しぶりに美味いコメを食べたような気がした。それもそのはずでご主人が今年作った新米だった。
「親ができなくなったので見よう見真似でやってみたんですよ」
あとから帰ってきたご主人が話してくれた。
美味しいものに国境はない。
なんとうちの魔女奥さんはおにぎりを六個も平らげた。
日本へ行ったらダイエットなんか気にしないとは聞いていたが、あんな小さな体でまさかこれだけ食べられるとは思わなかった。タイへ戻って女相撲でも開催するのではとすこし気になった。

