妻との会話。
「で、どうなのベッドの寝心地は」
「とってもいい、サバイサバイ、夢も見ずに眠れたわ、でもねベッドが」
「なんだ」
「マットレスはいいんだけどベッドが、それも私が眠っている側だけ、あがり下りするときにときどき音が出るのよ」
「そりゃ木製のベッドだからな」
「あなたのほうも試してみたんだけどなにも音がしない」
「あはは」
あたしは思わず笑ってしまった。
「自分の重さを忘れたらいけませんよ。ベッドも可哀そうなもんだ」
「なに言ってるの!それほど重くありません。あ、そうそう、おもしろいことがあったのよ」
「なんだ」
「チンチョ(ヤモリの意)がね最近よく鳴くのよ、それがね一匹だけじゃないの」
思い出し笑いをはじめた。
「一匹はね今までどおり同じような声で、ケケケケと元気よく鳴くんだけど」
また笑う、
「もう一匹はね、ケッ・・ケッ・・ケッ・・ってゆっくり途切れとぎれに鳴くの。まるでおじいさんなのよ、これははじめて。あなたのお友達も老けたのだと思っておかしくって笑っちゃった」
「なに言ってるんだ」
「あなたも鳴いてみてケッ・・ケッ・・ケッ・・」
「バカ」
「アハハ」
「それはそうと、眠るとき、いちどセンターで眠ってみな。キングサイズのベッドでそれこそ王様みたいに眠れば夢も見ないかもしれないし、ベッドもギコギコ言わないだろ。いつも夢を見たりするのは、端っこで寝ていて、落ちるとか、気をつけようとか、そんな深層心理がはたらいているのかもしれない。それこそ空いているスペースがもったいないだろ」
「わかった、今夜さっそくためしてみるわ。ケッ・・ケッ・・ケッ・・」
「バカ、婆さんヤモリか」