

今夜はクリスマスイブ。
思い出して今夜は枕元に靴下を置いて眠ることにした。
もしかしたら迷子になったサンタがアユタヤでそりを停めてくれるかもしれない。
「魔女の家だとわかると来てくれないかな」
「アハハ、タイは暑いからサンタはパスするわねきっと」
身も蓋もない。
幼年期にサンタがやってきた思い出のない妻はある意味でかわいそうだ。
もちろんあたしは妻と違って典型的な貧しさのなかで幼年期を過ごした。それだけに年に一度しかないミラクルクリスマスは大切な記憶でもある。
母が用意してくれた新しい靴下を枕元において眠る。
目覚めた25日の朝。靴下のそばに少年雑誌や鉛筆、ノートなど、その時代の子供には宝物だった。
今年もサンタクロースはきてくれた。幸せだった。
ある年、母に尋ねたことがある。
「うちには煙突がないのにどうしてサンタは来れるの?」
「みてごらん、家はあちこちに隙間があるでしょ、サンタさんは魔法が使えるから煙突がなくてもちゃんと入ってこれるんだよ」
小学校も高学年になるとさすがにサンタが誰であるかは理解できた。
しかしそれでも、母やそして子供たちもそのことについてふれることはなかった。
記憶では中学生になってもサンタは来てくれた。
プレゼントも高額なものになり、万年筆や小型のカメラなどが舞い降りた年もあった。
クリスマス・イブは幸せな記憶のまま今も心でツリーがキラキラ輝いている。