彼の名はノンという。
もちろんニックネームだ。タイではほとんどの人が友人知人の本名を知らない。
電話番号とSNSの連絡先が分かればそれでよい。
好人物であるが英語がさっぱりなので、なんちゃってタイ語のあたくしとは会話が成立しない。たまにお互いわかったようなつもりでいて後で第三者に確認するとまったくだったというようなことが少なくない。
彼の私用車の日本語が気になっていたので尋ねた。
「このシール、何語か分かっているのかい?」
「ええ、日本語ですよもちろん」
「意味は?」
「それは知りません。ショップで見つけて貼っただけだから」
そんなことだろうなと思った。


よく外国人が意味も分からない日本語Tシャツ【痔】とか【冷奴】とかを着て、すまし顔で歩いているが、それをTシャツにプリントしようと考えた人間に会ってみたいといつも思う。
ほとんどは内容よりも見た目で漢字を選んでいるのだろうが、その感性や感覚を覗いてみたい。
話を戻そう。
ノンが尋ねる。
「この日本語、どんな意味です?」
どりてん、とかいていあるからおそらくドリフト天国からもじったものだろう。
けれどそんなことをいちから説明するのは面倒だし、おそらくドリフトそのものも知らないだろうから、いやあたくしの方が困るので、別の説明にした。
「これは、この、【ど】のチョンチョンが間違いで、ほんとは日本語で(とりてん)と書いてるんだ」
「トリテン?」
「そう、とり天、とりはチキン、タイ語でガイ。とりの天ぷら。だからとり天なんだ」
「ガイの天ぷらか・・・」
「チキンはフライもいいけど天ぷらも美味しいよ。ああこれを見るだけでお腹が空いてきた」
これで【どりてん】の説明は終了した。
指をさして、これ私がやりましたってやつさ
言ったらほんとにやってくれたノンはいい男だ

ところがあとでびっくり。
ノンちゃんは近くにいた仲間にこの日本語の意味を得意げに説明していた。
テンプラと聞こえてきたから、あたくしの説明をこんなときにかぎってちゃんと理解したようだ。
頭のよい奴は少なくないからこの冗談はすぐにばれるだろう。
まあいいか。大勢に影響はない。どりてんだろうがとり天だろうがなんてことはない。
いい加減な日本人がテレビで責められることはないだろう。
お姉さんお兄さん今日は忘れないでね とくにFC2プッシュしてね↓↓