天国にちかい場所にて
日々のドキュメント 旅 アジア

『ちい公、よく来たね、といいたいところだが、お前さんは線香の一本も買わないんだね。タンブン無くして来世の幸福は望めないぞ。現世でお前がお金に縁のない生活を強いられているのは前世で徳を積むことが少なかったからだ』
「お坊さん、あたしはね日本の仏教徒なんでタイの仏教である上座部仏教(テーラワーダ仏教)とは基本的に思想が違うんだ。だからねタイのお寺や坊さんの像の前にきてもすぐに軽い財布を開くようなお人好しではないんだ、わるいね」
『そんなことを言ってると来世ではもっとひどいことになっているぞ』
「脅したって無駄だね。そもそもね、タイでは何かというとすぐにタンブン、タンブンといって徳を積むことがいかにも美徳であるかのように喧伝するけれど、なんのことはない貧乏人からなけなしの金を巻き上げる便利な手法じゃないか」
今日のちい公、おしゃべりはつづく。
「金ぴかのお寺だって庶民が持ち寄る金がなければ一日だって維持できないだろう。それにさお坊さんあんたは確かにタイでは有名な高僧であちこちのお寺にも像が建立されているような偉い人だってことは知ってるよ。だけどさ、ここはなんだ。お寺かって聞けば、そうじゃないという。ならなんなんだ、遊園地かい、動かないゾウもいるしな。しかしなんだ、キンキラキンの像の前でお供えをして祈る人はほんとにこれで救われるのかい? あたしは疑問だね、不思議と言ってもよいな」


『お前のような日本人には何を言っても無駄だ。ここが天国に一番近い場所だと信じて参拝する者たちも多いのだ。もうお前とは話はせんからとっとと天国から出て行きなさい』
「どこにでもなんでもかんでもデカいものをおっ建てて、タンブンだといっちゃ貧乏人の金を吸い上げる、これでよいのかい貧乏で善良なだけの人々は」
こうしてちい公は天国に近い場所から追い出されたのだった。
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こんなことを言ってると、あたしとおなじような意見を持つ人々が存在することが分かった。
先だってうちの魔女が行ったヘヤードネーションも、そのような運動のひとつとしてとらえているようだ。
要するに徳を積むという行為はなにもお寺にお金を運ぶことだけではないという。病院に寄付する行為もそうだし、貧しい地域や人々に率先して援助をするなど、従来のすべてお寺にというスタイルを改めようというムーブメントであるらしい。
もちろんお寺サイドにすればタンブンという便利な言葉は自分たちのところに金を持ってくる行為以外のものであってはならないと考えているのかもしれない。
この話はいずれまた掲載します。
コメント
2019-01-30 07:53 ピオの父ちゃん URL 編集
Re:ピオの父ちゃん 様
檀家制度の崩壊とまではいいませんが時代の変遷が寺を取り巻く環境にも
大きな変化をもたらしたのでしょうね。
2019-01-30 10:13 ちい公 URL 編集
No title
タイのお坊さんはまだ、多くの方に有り難がられているだけ幸せですね。
2019-01-30 10:25 雨スピ URL 編集
Re:雨スピ 様
皮肉を込めて言えば
タイの坊さんはその教えの通りまだまだ天国にもっとも近い場所にいるでしょう。
誰のためというより厳しい戒律の中で生きているのはすべて自分自身のためなのです。
それが上座部仏教の精神であるのです。
2019-01-30 10:48 ちい公 URL 編集