今日は、まずこのお話をお読みください。
これは一昨年2017年4月に掲載したものです。

「おおいちい公じゃないか」
セブンで呼んでるのはダム公。
「あんたっちの国じゃ大騒ぎじゃないか。なんでも国会議員が次から次へと女の問題や失言だってな、どうなってるんだよ日本は」
「・・・」
あたしは返す言葉もない。
「もっと賢いはずじゃないのかい日本の国会議員はさあ」
「みんな自分たちがエライと勘違いしてるのさ。ろくに日本語もしゃべれないバカが大臣だっていうのだから情けない、おいら恥ずかしいよ」
「な、そうだよな。それによ、国会議員は辞めなくてもいいんだってな。タイの国会議員と似たようなもんだ」
あたしはあわてて話をかえる。
「ところでダム公、セブンで日がな一日なにをしてるんだ。まさか警備じゃないだろ」
「いやなにね、あんたとちがって俺の毛皮は黒だろ、だから夏場は暑くってさ、たまんないのよ。ここならただで涼めるからね」
「そうなのか、それはナイス・アイデアだな。じゃまたな」
「おおい、ちい公あんたも入ってこいよ。もう少し日本の話を聞かせろよ」
・・・やなこった。今は聞かせるようなすごいジャパンの話などなんにもない。

さて年月の移り変わりのなんと早いこと。
あれから2年も経ってしまった。ただいたずらに時間だけがすぎてゆく。
いつものように苦虫顔で歩いてセブンへ。
アイスを買おう。酒は昼を過ぎれば夕方まで買えない。なんともヘンな法律だ。
ついでに菓子パンなども買おうか。
プラプラ歩いていると、
「おい、ちい公、ちい公じゃないの」
こんなところで、こんな店で、気安く人の名前を呼ぶやつは誰だ。
「オレだよオレオレ」
「誰だよ詐欺師か」
「オレだよ、ダムだよダム、忘れたのかダムコウだよ」
「ダムコウ? おっダムコウかお前。何してるんだこんなとこで、お、お前はバンコクにいたはずだろ」
驚いた。どうしてこんなところにいるんだ。
「なにかやらかして逃げてきたのか」
「なに言ってるんだよ。一緒に住んでた人間の家族が転勤でこの町へ引っ越してきたんだよ」
どうやら捨てられることもなく一緒にやってきたという。
「ちい公も同じだろ。知ってるぜ、魔女さんにくっついてバンコクから引っ越したってな」
「バカそんなことはどうでもよい。けどお前、ダムコウ、えらく小ぎれいな格好をしてどうしたんだ。生活レベルが上がったのか田舎へ来て」
「いま、ここで働いてるんだ。バンコクでやっていたと同じようにセブンがあったんで毎日涼みに来てたら店長が仕事をくれたんだ」
「ほう仕事か、お前がねぇ。何やってるんだ万引きの監視か」
「それもあるけど犯罪予防ってやつだろな。どうだちい公、あんたもやらないか、なんなら店長に紹介してやろうか。日本産のノラ公なら人気が出るぞ」

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