
ジロー君とは長いつきあいになる。
もう20年ちかく前のクリスマスにあたしのところにやってきた。
以来、ほとんど留守にしていた日本の仮住まいでずっと部屋を守ってくれた。
海外へ一緒に出ることはなかったが、ある年に配偶者ができてふと思った。
あたしだけが嫁のいる家に戻って、こいつはまた一人で日本で留守番か。
なんとなくかわいそうに思えてタイへ連れてきた。
以降は魔女のペットみたいになって、あたしの不在時もしっかりタイの部屋を守っている。
そこへやってきたのがユメちゃん。
魔女さんがみつけて連れてきた。
ところがジロー君には友達ができた喜びよりも不満が大きかったようだ。
「とうちゃん、あのさ」
「なんだ」
「ユメちゃんのことなんだけど」
「どうした?」
「ぜんぜんおもしろくないんだ」
「おもしろくないってか?」
「いつも寝てばかりでさ、どうもバカみたいなんだ。図体がでかいばかりでだめだな」
ジロー君はさすがにちい公の連れ子だけあって口の悪さは天下一品の味噌ラーメン。
「そうだな。魔女ママさんがどうして寝てばかりのユメちゃんを連れてきたのかな。きっとさ、ジロー君とユメちゃん二人とも目があいていたらいつも見られているようでゆっくり眠れないんじゃないかな、きっとそうだと思うよ」
「ふーんそうかなあ。でもさ魔女ママはね、とうちゃんがいないときはいつも大いびきでよく眠ってるよ。ボクが夜中にヤモリの番をしているときも平気だよ」
「おいおい。いないからってちょっと言いすぎじゃないか。お外でも見ときな」
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