インフォメーションスタッフから入管への電話が終わった。
誰かがオフィスへ案内してくれるのかと思ったがそうではなかった。
「係官がここへ来ますから10分か15分ほど待ってください」
「待つって、ここで?」
それからしばらくインフォメーションの前で待つことになった。
ちょうど前はエアアジアのチェックインカウンターだ。次は中国行きのチェックインらしい。団体が長い行列を作りはじめた。
それにしても、何処の国でも中国人の騒がしいことよ。静かに整列して待つということがどうしてできないのか。恥ずかしいという気持ち、日本人のような恥の文化が根本的にないのだろう。
あたしはこの場から逃げ出したくなったが、そうもゆかず、ただ突っ立っている。
いったいどうなるのだ。
皆目見当がつかない。
彼らが来てオフィスへ案内するのだろうか。
おかしなことを言うようなら徹底的に論破しなければならない。こちらはなにも間違ったことをしていない。
15分程と言ったがどうせ30分はかかるだろうと高をくくっていた。しかしピッタリ15分で入管の係官がやってきた。驚いた。
制服の男女二人。
もしかしたらうるさい日本人かもしれないとボディガード役を連れてきたのか男の方はやけにでかい。
二人ともきっちりワイ(合掌)できれいな挨拶をする。
男の方が言う。
「あなたもお分かりのように入国審査がたいへん混雑してまして、今回のようなことが起きました」
丁寧な英語だ。
ちい公も言葉を荒げるわけにはゆかない。
「それは理解できます。いつもこんなことはないので安心していたのですが、昨日パスポートをみて驚いたのです。慌てましたよ」
オフィスへ行くのかと思っていたがそうではなく、インフォメーションの長いカウンターですませるようだ。女性の手に入管のスタンプが見えた。
彼女があたしのパスポートをチェックし、ビザのページを開く。
あたしのこれまでの入国記録だろう、写真付きのプリントアウトと照合する。
「ほう、こんなのがあるんだ。そういえば今回は両手の指紋まで全部取られた」
すると男の係官が、
「心配しないでください。情報の管理はきっちりしていますから」
日本が個人情報にうるさいことを知っているのかどうか、そんなことを言う。
手続きはすぐに終わった。
オフィスへ行くほどのことではなかった。
入国スタンプにビザの種類を記入し、リミットデーの日付を書き換えて終わり。
「これで終わりです」
日本ならここで、お手数をおかけして申し訳ありませんでした、などと詫びのひとつも言うのだが、ここはタイランド、そんな言葉が出るわけもない。
しかし感心したのは、最後に二人が、
「ありがとうございました」
そう言って背筋を伸ばしきれいなワイ(合掌)の挨拶をしたことだった。
これにはあたしも驚いて、
「こちらこそ、忙しいところをどうもありがとう」 きっちりワイの挨拶を返したのだった。
そもそも役人天国のタイ。
どの役所でも威張ってるのは役人というのが常識の国。
少しだけ気分がよくなった。
まったく単純なのだ。
最後に、ピオの父ちゃんから頂いたコメントを今後の教訓にしよう。
『異国で公務員相手に喧嘩しても、負けます・・・』
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