重いけれどもなにも落ちてはこない冬の空。
陰気な空だ。
だから日本の冬は嫌いなのだ。
心しぼむ。
「泣かないで」
君は言った。
俺だって泣きたくて泣いてるんじゃない。
ただ涙があふれてどうにもできないのだ。
「あたしはもう覚悟がついてるんだから、それにさ」
わかってるんだよ、君はつよい人だ。
「それにさ、余命がどれだけって言われたわけじゃないんだから」
わかってるんだよ、そんなことは。
ああ今日も冬の空は暗い。
毎日、あの日の君の言葉を思い出す。
生きとし生けるものすべての命には期限がある。
わかっているんだ、わかっているんだよそんなことは。
けれども君に、君に、こんなことが起きるなんて考えもしなかった。
冬の重い空を見上げる。
予期せぬ涙がながれるひとすじそしてまた。
ああ、
悲しいとはこんなことを言うのだろ。
意味もなくコップ酒をあおる。
涙がとまらない冬空の下。
自分は生きる。
生きなくてはならない。
責任がある。
そして君にも
生き抜いてほしいと願う。
この季節をのりこえてほしいと願う。

にほんブログ村