休日の朝。
静かな街を新幹線の駅に向かって歩いていた。
3月に東京へ行ってから久しぶりの新幹線。
あれ以来、日本は新型コロナの天下となり日本人は恐れおののき雨戸を閉めてひたすら籠った。
ここにきて日本全体がゆるんだように見える。
GoToキャンペーンだけのせいでもないだろうが、まるでコロナなど消え去ってしまったかのような感もある。
ところがどっこい日々の新たな感染者は依然として高止まりでつづいている。
けれどいつまでもコロナを怖がってばかりではなんの進歩もない。感染防止対策さえしっかりすれば後は運を天に任せるしかない。なにをしても100%安全などということはないのだから。
ことぶきタカ君がタイへ戻れないちい公を可哀そうに思って、以前から行きたがっていた愛知県知立神社への旅を提案してくれた。
なぜ知立神社なのか。
これには理由があってないような話。
有名な水戸黄門のテレビドラマで過去二度も登場した神社、それだけの話。その地でロケが行われたわけでもないのだが、そもそも水戸光圀様はドラマのような諸国漫遊などしていないというのが通説なのだから、それでもただその場所へ行きたいとずっと思っていた。
何十年も前に寅さんの聖地である葛飾柴又を訪れたことがある。寅さんがまだ現役で日本のあちこちを商売しながら歩いていた頃だ。
柴又そして江戸川の土手を歩いた。
特別な感慨があった。
それと今回の知立神社は必ずしも同じ思いではない。
ただ、もし自分が何かを創ることがあればそのイメージを増幅させてくれるヒントを与えてくれるかもしれないという思いがあった。
その数百年の歴史は自分をある時代へと誘う力があってもけっして不思議ではない。
新幹線駅へ着いた。
この旅は名づけるならば昭和の助さん格さん、助格の旅だ。
そんなことを考えていると、ことぶきタカ君がやってきた。
開口一番、
「弁当買いましょうか」
「弁当?」
「朝、なにも食べてこなかったもので」
そうか、ならそうしよう。
返事をしながら思った。
こりゃ助格漫遊記じゃないな。いつも腹をすかしている八兵衛がいる。
ちい公と八兵衛の旅だなこりゃ。

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