ベンベン ベンベン
草木も眠るぅ~~ 丑三つ時ぃ~~
生ぬるい風が どこからともなく
ベンベン ベンベン
しかしやっぱりここは都会なんだな。
こんな時間になっても表は賑やかだ。
道ゆく人はすぐそばで人が眠ってるなんてことは考えもしないのだ。
大声の早口、女性同士。
おそらく呑み屋か深夜営業の仕事帰り。
以前は中国語が多かったが、最近はベトナム語が聞こえてくる。
女性同士の大声会話、これが昼間ならフィリピン語いわゆるタガログ語が聞こえる。というのも倒れ荘のある区にはフィリピン人が多く住んでいて、介護関係など昼間の仕事についている人が多い。
かと思えば大声で歌いながら歩く男。
何語だろうと耳をすますと酔っぱらった日本人だったりする。
しかしときには酔ってもなさそうなのに大声で歌う男がいる。
仕事かバイトでよほどストレスが溜まっているのかと思うけれど、倒れ荘でも道端の一階住人はたまったものじゃないだろう。すぐ枕もとにカラオケ屋があるようなものだ。
かと思えば男と女のヒソヒソ声。
聞こえるか聞こえない程度の音量で、ときおり女の含み笑いが聞こえる。さっさとどっかへ行けよと思うが、なかなか動かない。
こうなるとあたくしちい公はもうダメ。カメラを片手に窓に忍び寄る。なんのことはないただの盗撮魔に変身、はいヘンタイ止まれ。
しかしあれだな、酔っぱらって歌など久しく歌ってない。
すこし行った盛り場のカラオケ屋もコロナの影響だろう、知らぬ間になくなっていた。
その店には何度か行ったことがある。
妹のおつきあいだった。
若い頃から彼女は兄の歌をなんとかしようといつも試みてきた。昔は妹の家にレコードでカラオケを唄えるセットがあって、私はいつも裕次郎を唄っていた。そのたびにあれこれ注意されたが、それもいつしかあきらめたらしく、のちにカラオケ屋で私が歌っても拍手するだけになった。しかしお世辞にも上手いと言われたことは一度もない。
もう人生でマイクを握って歌うことなどないだろうと思う。
すべてなにかしらの思い出につながり、懐かしさよりもまだ悲しみのほうが先に立つ。
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